八百竹は長崎県佐世保の小さな集落平松町で、ゆず胡椒をはじめ、地元野菜を使った漬物の加工・販売と、無農薬の自家蕎麦の栽培から製麺（手打ち）・販売までを行っています。
屋号の「八百竹（やおたけ）」は昭和30年代に祖父母が営んでいた万屋（よろづや）の名前です。近所の方々から慕われ繁盛していた八百竹のように真面目でひたむき、そして地域を元気づけられる事業を目指したいという思いで名付けました。

事業主の遠藤祐次は大阪の老舗料亭やシンガポールの世界的有名ホテルなどで和食料理人として20年以上を過ごしてきましたが、もともとモノづくりが好きな職人気質で、いつかは土と共に暮らしたいと思い続けていました。そんな折、義姉の郷里である長崎へ訪れる事があり、平松の山の豊かさや緑の美しさ、そして標高300メートルから早岐湾を見下ろす景色の素晴らしさに心を打たれ、2021年より農業の道へ転身することを決意。
耕作放棄地で荒れ放題だった土地をこつこつ開墾し、地元の方の心強い協力と応援を得て、柚子こしょうの原材料となる唐辛子や、お蕎麦、小麦、季節の野菜等、自然栽培（ときどき有機）で作物づくりに取り組んでいます。
また地元開催のマルシェや400年の歴史がある早岐茶市等に参加して、農家兼・生産者である第六次産業への一歩を踏み出しています。高齢化で過疎の一途をたどる平松町。この小さな集落の小さな加工場から美味しい物産品を作り出し発信する事で集落を元気にしたい、長崎の豊かな自然で育った作物の美味しさを食卓へ届けたい、そんな思いで日々、土と向き合っています。

標高300メートルの山間部にある平松には大きな畑はありません。
急な斜面に畑があって一段一段が小さく、全部あわせてやっと一反、二反。八百竹はそんな畑をいくつか持つスモール農家です。収穫した作物を運ぶ時は急な坂道をキャリーで、時には手で、何度も畑を往復してこつこつと運びます。畑の入り口は狭くて急斜面なので重機は入らず日々の畑の管理も大変です。それでもここで農業をする理由はこの環境だからこそ育つ作物の美味しさに他なりません。
冬には時に凍結し、春夏には九州の温かい陽がふり注ぐ、厳しくも自然のままの豊かな 土地がおいしい平松の作物を育ててくれます。